外資制限、米議会で審議トランプ氏、対中強硬策見送り

https://r.nikkei.com/article/DGXMZO3233375028062018000000?n_cid=SNSTW001

外資制限、米議会で審議トランプ氏、対中強硬策見送り
2018年6月28日 4:32

【ワシントン=河浪武史】トランプ米大統領は27日、中国企業の対米投資の制限を巡り、既存の対米外国投資委員会(CFIUS)を活用すると正式表明した。中国の知的財産権侵害に対抗する強硬的な追加制裁は見送ったが、そもそも米議会で審議するCFIUSの権限改革法案は強力だ。対米投資の制限案はホワイトハウスから議会へと議論の場が移る。

トランプ氏は27日の声明で、米議会で審議中のCFIUS強化法案について「重要技術や安全保障を脅かす略奪的な投資行為を戦う新たな手段となる」と強調した。米政権内には中国に新たな制裁措置を発動し、対米投資を大統領権限で広範に差し止める案があったが、CFIUSの活用にとどめることで強硬策はひとまず封印した。

ただ、米議会で審議するCFIUSの強化法案は、そもそも中国勢の対米投資を大幅に制限する狙いがあり、成立すれば米中摩擦の過熱は避けられない。

CFIUSは財務省国防総省などが管轄する独立組織。軍事転用が可能な技術が流出するなどして安全保障上で問題だと判断すれば、大統領に投資中止を勧告する。中国企業ではアリババ集団系の金融会社が米送金サービスの買収でCFIUSの承認を得られず、今年1月に白紙撤回を余儀なくされたケースがある。

CFIUSはこれまで「米企業の支配を目的とする海外企業による買収・合併」を審査対象としてきたが、新法案では少額出資や合弁企業の設立も対象に加える。新法案には中国などを「特に懸念される国」と指定して審査を厳格化する条項もあり、トランプ政権の意向にも沿っている。

議会審議は既に終盤に差し掛かっており、下院は26日に与野党議員がそろって賛成し、400対2という圧倒的多数で可決した。上院も与野党ともに賛成派が多く、法案の微修正を経て可決する可能性が高い。

CFIUSは中国企業だけでなく、日本勢など外資全体を審査する仕組みだ。CFIUSの審査が煩雑になれば、米国への投資にこれまでより時間やコストがかかる可能性がある。